ボクの人生を文字通り刺激的にしたのは、スパイスとの出会いだ。
もちろん、おそらく多くの人と同じく、その入り口はカレーだった。
本場インドカレーのあまりのおいしさに感動し、その世界をもっと知りたくて、矢もたまらず現地へ飛んだ。 その当時、独学で学んでいたボクは、現地と同じ材料を使って同じ手順で作れば、同じ味になると信じていた。ところが、どうやってもインドで出会ったあの味にはならない。
インドの常識は日本の非常識
失敗を繰り返してようやく理解したのは、「インドの常識は日本の非常識」ということだ。インド人が持っている味の概念が、そもそもボクら日本人の感覚とは全く違う。 玉ねぎの切り方、火の強さ、スパイスを入れるタイミング…すべてが日本の常識で凝り固まっていたボクの料理は、 どことなくちんまりして、 インド風ではあっても本場の味には程遠かったのだ。
インド人になる
だから、ボクはスパイス料理の概念を持つために、すべての先入観を捨てて、徹底的にインド人になることにした。 インドの人たちと寝食を共にして、現地のお母さんのそばでたくさんの家庭料理を作ってもらい、舌に覚えこませるように、ひたすら食べた。 ある時は、ホテルやレストランの厨房に入り、プロのスパイスの使い方を教えてもらった。
これまでにまわったのは、インド国内は6か所、そしてスリランカ、ネパール。こんなもんじゃないといわんばかりに、地域によって個性がある。 ボクは、行く先々で、その土地の味を舌だけじゃなく、鼻に、目に、指に覚えこませていった。
ボクをここまで惹きつけた本場インドのスパイス料理は、シンプルで、ストレートで、大胆で、何よりウマい。 そこで叩き込んだ「スパイス勘」は、やがてボクの武器となり、これとこれでこう調理したらウマいな、という嗅覚が、ボクの中に確実に出来上がっていた。
スパイスの衝撃を感じて欲しい
こうして日本に戻ったボクは、この衝撃のスパイスマジックを多くの人に伝えたいと思い、店を出した。 スパイス料理のバラエティを感じてもらうため、おまかせのコース料理3種類がメイン。あえてカレーを出さないのは、固定概念の呪縛から切り離したいからだ。
生牡蠣、きんぴらごぼう、ポテトサラダ。和食にスパイス、というと奇をてらっていると思うかもしれないが、これがボクだからできる新しいスパイスの世界だ。
本場のスパイスの世界を料理教室で
そして、もうひとつ。料理教室は、段階的にスパイス料理を極められるよう設計している。 新しいスパイス料理の楽しさを提供する店の料理とは違って、料理教室で教えるのは、簡単で美味しいのはもちろん、毎日でも飽きない本場のインド料理だ。
日本でもスパイス料理というものが脚光を浴びつつあるけれど、多くの人はスパイスといえばカレーであり、 何十というスパイスを混ぜ合わせたとか、何時間煮込んだとかがもてはやされ、その概念からいっこうに抜け出せていない。 だからボクは、概念が変わるその日まで、本物のスパイスの魅力を伝えていきたいと思う。 玉ねぎは強火で15分で一気に炒めればいいし、スパイスの基本は4種類でいい。インド人がなぜスパイス遣いがうまいのか、それはレシピではわからない世界だ。 店や料理教室、通信販売、商品プロデュース、その入り口はなんだってかまわない。そこで、これまで培ってきたすべてを届けたいと思う。
とどまることは苦手なので
そして、その場にとどまることが苦手なボクは、さらに進化し続ける。新しいこと、誰も味わったことのない世界、インド人でさえも到達できないところで勝負する。
スパイスとは、人生をより刺激的に、ときに深みを与えるもの。だから、関わり方次第ではどんどん深みにはまるかもしれないが、…まずはこの世界の扉を開けてみてほしい。
そこから先は、ボクがあなたの知らない世界へ連れていくから。